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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 月明かりに照らし出された公之の顔が、公子には見知らぬ別の男のように見えた。
「この頃、私が宇治の別邸に女を囲っているという噂が立っています。しかも、足繁く通うところから、その女が懐妊しているのではないかとさえ囁かれているそうです。私は、そういった世事には疎いので、つい最近まで、そういった噂があることさえ知りませんでした。

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