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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

「いや、姫は十分に綺麗だし、魅力的だ」
 その言い方があまりにも生真面目な口調なのに、公子は思わず笑いが込み上げてきた。「何ですか、人が真面目に恋の語らいをしているというのに、笑うことはないでしょう」
 公之が拗ねたように言う。
 初めて見る少年のような無邪気な表情に、公子は微笑む。
 公之とめぐり逢って、もう五月(いつつき)になる。その間、色んな話をしたけれど、今の自分はまだまだ公之のことを殆ど知らない。

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