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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

 それは公子が世間知らずの姫君ゆえというだけではなく、恐らくは公子本来の持つ気性だろう。男も顔負けの博学家でありながら、虫を眺めたりするのが大好きでな公子は、誰よりも優しい。それは、公子の虫に対する興味が単なる興味だけではなく、優しさにまで及んでいることからも判る。
 たかが虫一匹と、公子はけして言わない。
―虫だって、私たちと同じで、ちゃんと生きているのよ。
 それが、公子の口癖であった。

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