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ショートラブストーリー

第5章 遥(はるか)

池上くん、どうしたんだろ…?

私はオジサンに見つからないように、湯槽の縁に隠れるようにして入っていた。

肩まで入ってるからか、ビール飲んだからか、温泉のせいか…段々のぼせてきて。

はぁ…熱いなぁ…。

すると、池上くんが戻って来て

「これ、使って」

と、バスタオルを投げてくれた。

「あ…ありがとう…」

湯槽の中でバスタオル巻き付けて。よし、これで出れる!!と立ち上がったら…あれ!?

一瞬、目の前が黄色くなって、私は湯槽の縁にしがみついた。

「水沢さん!?」

「大丈夫。平気だから。…うん、大丈夫ダイジョーブ」

心配してくれてる池上くんににっこり笑って

「ありがとう。池上くんはゆっくりしてってね?」

そう言って、露天風呂を後にした。



脱衣室に入ったら気が緩んだみたいで。

私は洗面台の前に置いてある椅子に座り込んだ。

……きっつい…。頭がふらふらする。

冷たい水で濡れタオル作って、首に当てていると少し楽になった。

今のうちに部屋に戻って休もう。

スッピンのまま、浴衣に着替えて脱衣室から出ると、扉の側に池上くんが立っていた。

「あれ!?もう出たの?」

「いや…水沢さん、大丈夫かなと思って…」

「あ…ありがとう。大丈夫だよ?」

本当はまだちょっとクラクラするけど。

「何か飲んだ方がいいですよ。おごってあげますから」

池上くんはそう言うと、私をいざなって自販機コーナーへ向かった。

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