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ショートラブストーリー

第10章 美帆②

栄転、ってやつだよね。

「めでたいかどうかは今後次第だけどな」

課長は苦笑いを浮かべて…でも嫌じゃないんだろうな。楽しそうな表情してる。

「まぁ、そんな訳で。残務整理やら引っ越しやらで忙しくてね」

「あ…そんな時に連れ出してすみません…」

「え!?誘ったの俺だし。…楽しかったし」

ううっ…。課長、優しすぎるよ。

「向こう行ってからも暫くは忙しいだろうって思ってる。…だから」

暫くの沈黙。

この流れなら、いくらあたしでも次に何言われるか分かる。

「北方さんの気持ちはとってもうれしいんだけど、応えられない」

…やっぱり。

課長の言葉に、両手を膝の上で握りしめた。

「…ごめん、な」

「いえ…。はっきり言ってくれてありがとうございます」

あたしの気持ちを真剣に考えてくれたから、誤魔化さずに断ってくれたんだもん。

課長の優しさだよね…。

「あたし…それでもやっぱり課長が好きです」

言ってから、少しだけ後悔。

何か…ものすごく諦めの悪い女みたい。

課長の顔なんか見れなくて、俯いてしまう。

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