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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第2章 壱

 屋敷にいて、母にやれ結婚しろ、妻を娶って子を儲けろなどとせっつかれるよりは、町の道場で剣を握っていた方がよほど良い。
 そこで、嘉門はハッと我に返った。
 そろそろ、いつもの場所だ。そう、町人町の目抜き通りも終わりかけた片隅に、その店はある。嘉門の屋敷があるのは町人町とは和泉橋を隔てて隣り合った和泉橋町だが、通う道場はここ町人町にあるのだ。

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