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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第2章 壱

 母は母で、美しい面にいつも険を孕み、絶えず何かに苛立っていた。今になってみれば、母は父に振り向いて貰いたかったのだろうと察することができる。が、我が身が松平家の姫であるという誇りは、最後まで母を縛りつけてしまった。母は最後まで父に歩み寄ろうとはせず頑なな態度を守り、その病床を見舞うことさえなかったのだ。

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