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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第3章 弐

「それでもね。石澤のお殿さま。お都弥ちゃんは幸せだったと思いますよ。明日をも知れぬ病気にかかって、憐れまれる病人なんかじゃなくて、元気なままで、石澤さまに愛されたまま、ただの女で逝きたい―、それはお都弥ちゃんなりの女の意地でもあったでしょうよ。その女の意地が貫き通せたんだから、あの娘(こ)はけして不幸じゃなかったと私は思いますがねえ」
 嘉門はゆるゆると立ち上がった。

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