君に恋した冬
第19章 過去
いかがわしいCLUBを出て少しした所で
ズキッと帝王切開の傷が痛んだ
『った…!』
思わず顔を歪めてお腹を押さえる由梨に
「…?」
アキラは足を止めて由梨を見つめた
「腹…痛いのか?」
多分普通の腹痛だと勘違いしているようで
由梨はどことなく恥ずかしくなる
『ううん…そんなんじゃない…』
「じゃあ何」
『…なんでもない』
そしてまた沈黙が流れる
懐かしい空気に胸の奥が疼く
「…恭は?」
『あ…そう言えば…どこ行っちゃったんだろ…』
先に出て行ってしまった恭介の姿はどこにも無く、
不意にアキラの携帯電話が鳴りだした
「もしもし、お前どこにいんの?」
どうやら電話の相手は恭介の様で、しばらく話したあとに電話は切られた
はぁと短く溜め息をついて、アキラは由梨に向き直る
「とりあえず、俺ん家でいい?」
なんだか前もこのCLUBで同じ事を言われたなぁと思いながら、コクリと頷いた
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