君に恋した冬
第7章 大事なもの
インターホンを押すが、もちろんアキラは留守だった
以前貰った鍵を使って部屋に入る。
この合い鍵を使うのは今日が初めてだった。
家の中は、ほんのり煙草の香りがして
アキラを容易に思い出させた。
こんな所に来ても、答えが出る訳じゃない
そんな事はわかっていたが、
この気持ちをぶつけられる相手は
由梨にはアキラしかいなかった
黙ってリビングのソファーに腰掛け
延々と同じ事を考える
大智くんは私が好き…
私も大智くんが好きだった…
もしあの時、あの男にぶつからなかったら
ちゃんと逃げていたら
アキラが私を襲わなかったら
考えはどんどん歪んでくる
ぐしゃぐしゃっと髪をかき乱してうなだれる
『早く、帰ってきてよ…アキラ…』
そうこうしているうちに玄関のドアが開く音がする
『あ…』
パッと顔を上げると、アキラが少し眠そうに
「あ…、来てたんだ。久しぶり。」
と無表情で言った。
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