テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 それでも毎日、少しずつ歩行練習を続け、秋には杖を使って一人で歩けるようになった。そして更にふた月、曽太郞はついに杖なしで、己れの脚だけで歩いたのだ。右脚をどうしても不格好に引きずるようになってしまうけれど、再び歩ける日が来ただけでも僥倖だといえた。
―そうか、千汐は、こんなにも可愛い子を生んでいたのか。
 父親となった歓びが俄に曽太郞の胸を甘いもので満たす。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ