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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 大真面目に言う幸助だった。
「あたしの方こそ、おつなさんに訊きたいよ。幸助さんっていう男がありながら、どうして、おつなさんはそうまでして、幸助さんを拒むのさ。そりゃ、確かに幸助さんは見かけはいまいちたけど、申し分のない男じゃないか。あの男なら、あんたとは似合いの夫婦になれると思うがね。―あんただって、幸助さんのこと、満更でもないんじゃない?」
 それは、千汐の勘だった。長年、こんな商売をしていると、人が素顔の下に隠しているもの―その感情(おもい)までが透けて見えてくる。

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