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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 それを始まりとするかのように。千汐の身体は再びゆっくりと頼に犯されていった。
 頼は様々な体内の臓器をも冒し、やがて末期に至ると神経までをも蝕んでゆく。千汐にはまだその末期症状までは出ていなかったが、今回は病の進行は思いの外速かった。
 おつなが連れてきた町医者は、千汐が今年いっぱい保(も)てば良いと言っている。
 むろん、その残酷な宣告は千汐当人は知らない。おつなが医者には固く口止めしていたからだ。

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