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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 千汐は、男の狼狽える様を想像しながら、一人、乾いた笑いを零す。
 笑いながら、千汐は泣いていた。
 化けものと呼んだ正次の声を思い出し、急にズキンと右頬の古傷が痛んだような気がする。
 今は無性に曽太郞に逢いたかった。
 あの優しい笑顔で見つめられ、やわらかな手でそっと傷痕を撫でられれば、この痛みもすぐに落ち着くだろう。

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