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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 あの傷痕のことを言っているのだと判った。
 千汐は知らず、右頬に手を添えていた。
 千汐の傷痕を指でなぞり、愛しむように撫でてくれた曽太郞。あの優しい手が今は無性に懐かしい。
 同じ男でも、曽太郞と正次のこの違いは、どうだろう! たとえ疵を持っていたとしても、自分の方がまだしもこんな最低な男よりは人間としてマシなように思えた。
 知らぬ中に、正次を睨みつけていたらしい。

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