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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

―天女さまのあそこを拝ませて貰っちゃあ、とんだ罰当たりだな。それとも、とんでもねえご利益でもあるか。
 などと、聞くに堪えない淫らな冗談を平然と口にしている。どうやら、もう一人の狐顔―駒吉というらしい―と異なり、この正次は饒舌でいささか頭の軽い男のように見えた。
 一陣の風が吹き抜けた。
 山茶花の梢がかすかな音を立てて揺れる。
 風で髪が嬲られ、束の間、右頬の傷痕がかいま見えた。

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