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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 曽太郞とここでめぐり逢ってから、幾つもの季がうつろった。あれから三度目の冬を迎えようとしている。
 ふいに寒風が身の傍を吹き抜ける。
 そろそろ川べりの山茶花が咲く季節になった。曽太郞と初めて出逢った夜も艶やかに花開いていた淡紅の花。
 千汐があの夜の想い出に耽っていた時、橋の上から賑やかな話し声が聞こえてきた。
「おっ、きれいどころがいたいた。こいつは夜から縁起が良いね、と」

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