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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 こんなことなら―。惚れた男に逢えぬ辛さにのたうち回りながら悶々として生きねばならないほどなら、いっそのこと、出逢わなければ良かった。いや、出逢ったとしても、声をかけず、黙ってすれ違うだけにすれば良かったのだ。
 あの日、あの時、曽太郞が声をかけてきても、知らぬ顔をして通り過ぎれば良かったのに。そうしたら、こんなに苦しむこともなかった。

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