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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

 翌朝、まだ陽の明けやらぬ暁方、曽太郞はむらさき亭から一人、出ていった。既に一晩降り続いた雪は止んでおり、男の雪を踏みしめる音が何故か、長く余韻を残して千汐の心に灼きついた。
―きっと、また、来る。
 その言葉を残し、男は去っていった。
 曽太郞は、いつ、どこで逢おうとも言わなかった。それでも、千汐は、曽太郞がどこに来るつもりなのかは判った。

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