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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

 この想いを忘れられなくなりそうで。
「千汐」
 短く応えると、曽太郞が破顔した。
「良い名だな」
「千羽鶴の千に、汐って書くの」
「汐って、汐汲みの?」
「そう、千汐って、ちょっと変わった名前でしょ。おとっつぁんが付けたの」
「そんなことはない。私は良い名前だと思うぞ」
 少しムキになって言う曽太郞を、千汐は笑って眺めた。

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