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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

 弥助はふと願掛けでもしてみようかと思案している自分に気付き、肩をすくめた。
―全っく、良い歳をしたおっつぁんが若え者のようなことをしても、みっともねえよな。
 絵馬堂の傍を心を残しながら通り過ぎて、奥ノ院を過ぎ、広大な寺内でも最も奥に当たる墓地に着いた。この広い墓地の片隅に彼の妻は永眠(ねむ)っている。
―お静。
 弥助は持参した小菊の花束を小さな石の墓に捧げ、手を合わせ亡き女房に呼びかける。

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