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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

 ほどなくして、おれんが丸い黒塗りの盆に銚子と盃を乗せて、運んできた。
「今夜はもう店じまいかい? 他に客はいねえようだが」
「ええ、この寒さじゃア、お客の入りもいつものようにはゆかなくて。今夜はあたしもそろそろ寝もうかと思ってたところだったんですよ」
 弥助は、やおら立ち上がった。
「そいつは悪ィところに来ちまったな。いや、申し訳ねえ、また、日を改めて邪魔させて貰うよ」

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