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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

 あまりにずばずばと言い当てられたために、返す言葉もなく立ち尽くしている。
「憶えておけよ、この私にそのような口をきいて、ただで済むと思うな」
 若旦那は口惜しさと怒りにふるふると身を震わせながら、捨て科白を吐いて退散した。
 それまでこのやりとりを興味津々といった様子で輪になって遠巻きに眺めていた野次馬が二つに割れる。
 二つになった人垣の間を、若旦那は足早に歩き去っていった。

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