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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

おれんの投げつける科白を聞いている若旦那の顔は怒りのあまり、赤を通り越して蝋のように白くなっている。両の拳が屈辱のあまり、小刻みに震えていた。
「な、何だって。言うに事欠いて、そのようなことを。おまけに、こんな衆目の中で私に赤っ恥をかかせやがって。この女狐め、虫も殺せねえような大人しい顔で、一体何人の男を誑(たら)しこんだんだ?」
 若旦那が怒りに蒼褪めた顔でおれんを見据えた。

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