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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

 大体、若い女がこんな深夜に一人で江戸の町外れを歩いているそのこと自体が尋常ではない。清七がそんなことを考えていると、突然、女の悲鳴が辺りに満ちた静けさを破った。
 清七はハッと我に返った。
 見れば、橋の上で女が二人の男に囲まれている。大方は町人町の方から来た男たちであろうが、どうやら相当に酔っているらしく、二人共に呂律もろくに回っておらず、脚許も怪しい。

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