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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

 この小さな橋一つを隔てて全く異なる二つの世界が存在しているかの様相を呈している。むろん、清七の暮らす長屋は町人町の外れにあった。
 三年前のあの日、おみのが死を選ぶほどにまで追いつめられていることに思い至らなかったこと―我が身の迂闊さに、清七は烈しい後悔の念を抱いている。せめてもう少し、おみのの気持ちを思いやっていれば。

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