
やっと、やっと…
第14章 自分を大切にするということ
「・・・・・
わかった」
しばらくの沈黙を圭介の言葉が断ち切る
「俺は離れるよ
唯のためなら・・・」
圭介は小さな声で
震えた声で言った
「・・・圭介、ありがとう」
圭介が分かってくれた
今までの苦しみから解放された
そう思えた
心が一気に軽くなった
すっかり暗くなった公園に
冷えた風が吹く
今の私には心地よくさえ感じた
私たちは公園を出て
一緒に歩いた
近すぎず離れすぎず
付き合い始めた最初の頃のようだった
分かれ道で立ち止まる
「じゃあね
ありがとう」
圭介は何も言わず頷く
圭介に背を向け街灯に照らされた道を歩き始める
「唯!」
圭介の声に振り返る
「ありがとう、唯」
手を振る圭介に私も手を振り返す
私は何も言わず
前を向いて歩きだした
暗い道に佇む圭介の顔は
見えなかった
