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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第2章 禁断の恋

 だが、王の方からこうして判り合える機会をくれたのに、それを無駄にしたくはなかった。
 庭園の片隅に、山百合が群れ固まって咲いている。七月の暑熱の中、薄紅色の花がひっそりと咲くその場所だけが清涼感を感じさせてくれた。
 王が山百合に近付くと、そっとその花に触れる。
「王妃の愛した花、山百合だ」
 王妃のことを口にしたその瞬間だけ、王の若々しい横顔に拭い難い翳りが差した。

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