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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第4章 心のゆくえ

 王が突然、明香の腕を掴む。
 あまりに愕いたために、明香は酒の入った徳利を取り落としてしまった。床にぶつかった衝撃で徳利が粉々に割れて、飛び散った。
 明香は慌てて膝をつき、無数の破片を拾い集めようとする。取り乱していたがゆえに、謝って指を欠片で傷つけてしまった。
 鮮やかな血が傷ついた指先から溢れ出る。
 その色は薄暗い室内でもひときわ紅く見えた。

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