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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第4章 心のゆくえ

 王は明香から徳利を奪い取ると、自分で盃を満たそうとした。が、幾ら傾けても、一滴の雫も出てこない。
「―!」
 王は苛立ったように徳利を掴み、勢いよく放り投げた。
「―殿下」
「主上」
 明香と崔内官が殆ど同時に声を発した。
 その中に咎めるような響きがあったのは、この場合、致し方ないことだろう。

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