イケない同棲生活
第4章 4――偽装生活
神速のスピードに感動したいところだが、今はそんなのん気な事を思っている場合ではない。
「あ、あんたっひ、人が来たらどうしてくれんのよ!!」
手で隠すべき所を隠すけれど、全く意味の持たないそれに涙目になる。
本当にありえない…っ
でりかしーってもんがないんじゃないだろうか、この男!!
「アンタじゃない」
「ちょっ!!」
けれど、呆気なく男によって外された私の手。
そのことに抵抗しようと顔を上げたのに。
「雨宮 真弘」
耳に届いたその言葉に、私はそれすら忘れて、はじめて見る男の優しい微笑みに、目を奪われていた。
「ま…ひろ…」
「そう」
やっと、口に出来た彼の名前。
その名を口にした途端に、なぜか胸の鼓動が速くなって。
まるで私の周りが明るくなったような、そんな錯覚が起こる。
「もっと、って思ったら、俺の名前を呼べよ」
だから、かな。
体をひょいっと持ち上げられ、傍らにあった机に座らされて、足を広げられても。
彼の綺麗な顔が、そっと足の間に埋められても。
ただ素直に、
「ぁッやぁっんンッま…ひろぉっ!!」
彼の名前を、呼んでいたんだ。
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