イケない同棲生活
第1章 1―しぐれ料亭にて
「楓、結婚おめでとう」
朝、起きてくるなり涙を浮かべる父が私にそう言った。
「・・・ワット?」
もちろん、昨日まで友達と飲み会を開いてはしゃいでいた私は、目が点状態で。
もしかして酔った勢いで誰かにプロポーズでもしたのかと思う。
呆然と立っていれば、父の後ろに居る母も、そして弟までもがパチパチと歓喜の拍手をくれた。
……いや。いやいやいや。
「私、彼氏すらいないんですけど」
「そんなのわかりきってるさ。直弥君いい子だったんだけどね」
――そう、飲み会を開いたというのも、彼氏に振られた私の慰めのためであって、フリー歴1日目の私に、婚約するような相手なんているわけがない。
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