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身代わり妹

第4章 現実

奏佑くんが帰っても、暫く待合室内はざわついていた。


「浅川さん、可愛い!」

ハート目の花純ちゃん。


「うん、可愛いね」

苦笑いの私。



「今の出来事、絶対伝説になりますね! ていうか、真横で見てた私が語り継ぐ!」

「……やめて」


奏佑くんに対する気持ちは、花純ちゃんに対する気持ちと似てる。

年下だからかな?

やる事なす事、可愛い。


(でも、嬉しいな)

バケツに収まり切らない薔薇の花束を見て、笑顔が零れる。



「…昼休みに寮に戻って活けてくるね」

「えぇ! 私から美優先輩への誕生日プレゼントにAランチご馳走しようと思ってたのに! 今から行ってきちゃって下さいよっ」

「でも……」


待合室の椅子に空きがある分、まだ患者さんは少ない方だ。

「大丈夫! 行っておいで」

他の受付ペアの4人がこちらを向いてVサインしてくれている。


その言葉にお礼を言って、私は席を立った。


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