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不器用なタッシュ

第17章 強行突破

優越感で、口端が上がる。


「明日、会社に連絡しろよ」

「やっ……あっ! ふっく……ひっく……」


戦利品の如く香織を抱こうとしたら、怯えて泣き始めた。
だけど――――。


「泣いても止めないよ……」


今、離してしまったら、永遠に俺の元に戻って来ないだろ――――。

だから今夜は、絶対に返さないよ。

俺のものだと改めて思い知らしめるように、抱いてやる。


香織の首筋に唇を這わせ、胸に手を宛がおうとした時――――香織が声を絞り出してきた。


「嘉之……イタリア……本当に行きたかったんでしょ」

「あっ? 何だよ」

「頑張ったじゃん……何で夢を叶えてるのに、こんなことするの……嘉之自身に傷が付くよ」

「気にしない……」


何、言ってんだよ――――?
だからお前と行くんだろ――――!


語り掛けてくる声を弾き返すように、自分の中で意地を膨らます。


香織は自分のものだと言い聞かせながら服を脱がそうとしたが、訴えてくる香織の声が耳の奥でハウリングする。


「頑張って欲しいと思っているよ!」 

キュィィィィィィン――――アァ、イタイ――――。

「嘉之……だから……」

イタイ――――ココロガ――クル、シイ――――。

「うるせえよっ!!」


バァァァァァァァァァン!!  


――――全てを闇で覆い尽くす。


「何でここまで必死に頑張ったと思ってんだよ!」


大量のインクが――弾け飛んだ――――。


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