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不器用なタッシュ

第10章 鎖

香織はお茶を一口飲むと、唇をキュッと結び


「嘉之…イタリアなんだけど…」


ズキン…


嫌な予感のシグナル。


俺は無視する様に、返事をする。


「ん~?」


カラン…
氷が溶ける音すら神経を逆なでしてきた。


「…イタリア…私…行かない…」


ズッキン…


その言葉は…今は聞きたくないんだよ…。


「そう…今すぐ答え出さなくてもいいよ。仕事とか、片付けないといけないのもあるだろ?」


核心を突かせない様に、話しを濁そうとしたけど香織は頑なだった。


「来年からも…行けない…」


「香織、ここ住む?」


「えっ?」


「ここ空けとくのも何だしさ…てか、一緒に今から住めばいいじゃん!」


「はぁ?」


香織の呆れた顔に、苛々してくる。


「その間に考えれば?」


「嘉之!あのね!」


いい加減にしろ!


「香織っ!!何かあったのか?」


「あ…」


怒鳴る様に名前を呼んで理由を尋ねたけど、香織は顔を歪ませて必死で俺を拒絶してきた。


「住まないよ…嘉之…私もう…っつ!!」


ふざけんなっ!


香織が言いかけている途中で、怒り任せに覆い被さり、体重を掛けて香織の身体をソファーに押し付けた。

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