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春の風

第9章 回想 side.瑞香


そんなあいつと僕が全く似ていないかといえばそれは嘘である。僕の、完璧に済まさねばならぬ性分は、憎いあいつ譲りだ。

僕のその面倒くさい部分は、許せる範囲があいつほど狭くなく、周りに寛容であることは、類を見るより明らかではあると思われる。

それに、僕はそれほど世間体を気にはしない。
愛すら知らぬのはあいつと同じだな。

だが。
あいつみたいに金や立身出世をノゾマナイ。


僕は、レールの上を歩く生活を、してきた。
父に言われて。他人に笑われながら。
そうするより他は無く。

ただひたすら勉学に勤しみ、ここまで。
何ひとつ、あいつのいいつけを破ったことはない。

理想の息子を演じてきた。

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