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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第21章 番外編第四話【轍~わだち~】

 思い惑う晶に、祖母は微笑みかけた。
「一人で生きてきたことに後悔はない。たとえどんな選択にしろ、自分自身で考えて出したものだから。ただ一つだけ、心残りがあるとすれば、幼くして亡くなった子ども―、あなたの伯父さまに当たる幸太郎のことかしら」
 その言葉に、晶は改めて、逢ったこともない伯父の存在を思い出す。母の四歳違いの兄幸太郎は六歳の夏、馬車に轢かれて亡くなったのだと聞いている。

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