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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

 それから数日後の朝、幸は一人、海辺に佇んでいた。絶え間なく寄せては返す波が白い砂を洗う。止むことのないその繰り返しは、儚い生命の営みにもに似ている。波は生まれたそばから消え、また新たな波が生まれる。人間の生命もまたこうして生まれ、やがては海に還ってゆく。亮平の生命をも呑み込んだこの海は、今日も穏やかに凪いでいる。

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