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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第8章 第三話【波の音】 予感

「これはいけない。突然のことに、さぞ愕かれたのでしょう。何か冷たいもので頭を冷やした方が良い。そうだ、あそこに噴水があります。手拭いか何かお持ちなら、あそこで濡らしてきて差し上げたらいかがですか」
 まだ若い男の声である。
「奥さま。私、ちょっと噴水まで行って参ります」
 御者の声に親切な男の声が重なる。
「なに、馬車の中のご婦人なら、私がお側におりますから、何もご心配には及びませんよ」

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