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月琴~つきのこと~

第3章 第二話 【月琴~つきのこと~】 一

 しかし、小文は端(はな)から嘉平太との縁談に気乗りしない様子だった。嘉平太を信濃屋の聟にどうかと仲人の生糸問屋の隠居から持ちかけられたのは小文が十五の一月半ばであった。嘉平太は小文より八つ年上の二十三になっていた。嘉平太は美人と評判の小文との縁談に最初から乗り気であり、仲人立ち会いのもとに見合いをしてひとめ小文を見てからは更に小文に惚れ込んだらしく、縁談(はなし)はとんとん拍子に進んだ。

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