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理想と偽装の向こう側

第19章 罪悪感?

「えっ!渡辺さん!」



「わぁ~!!渡辺さん、大丈夫ですか!」



遠退く意識の中で、みんなの声が聞こえる…。



最後に小さく



「香織…。」



嘉之に名前を呼ばれた気がした…。



******

「んっ…イタリア…?」



呟きながら、眼が覚めと



「イタリアじゃないよ。まだ、日本。」



目の前には、嘉之が居た。



「なっ!!何で?」



驚く私に、嘉之は淡々と説明をした。



「香織が倒れたから、車で来てた俺が送る事になったんだよ。アパートは知らないフリしておいて聞いたけど。」 



「…分かった…ありがとう…。じゃあね…。」



思わず声が低くなる。
吐き気が、また襲ってくるから、とにかく早く別れたかった。



「ふらつくだろ、部屋まで送るよ。」



「いい!大丈夫だから!」



伸ばしてきた嘉之の手を勢いよく叩いてしまった。



「香織?どうして、そんな不安定なの?人前じゃそんな感情、見せないだろ。」



「なっ!…うっ…!」



怒りと共に、吐き気が襲った。



「くっ…。」



口元を手で塞ぎ、前屈みになる。



「香織?」
「嫌っ!触らないで!…うぅっ…!」



立て続けに、這い上がってくるかのようだった…。

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