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理想と偽装の向こう側

第10章 信頼と疑惑

「僕の時代は、今より世の中は、まだまだ間口は狭くてね…絵描きをなんて言ったら鼻であしらわれる感じだったよ。飛び抜けた才能か、大きなバックアップでもないと食べていけるまでの職業には、出来なかったかな。」



「はい…。」



「現実と才能を中々認められなくてね…周りに迷惑かけながら、自分の夢しか追っかけてなくて…一番辛い思いを妻にさせてしまった。」



あっ…だからか…あの時の微妙な表情は…。 



「完璧に行き詰まって、自暴自棄になって、感情的になって…いい大人が子供みたいだった…。周りが呆れてる中に、妻だけは献身的に支えてくれてたんだよ…。」



「素敵な奥さんですね。」



見せてもらった写真を思い出す…美人で優しさか滲み出ていた。



「けどね…唯一の支えだった妻も限界がきて…ポッキリ折れてしまって…長い間、精神的な病になったんだ…。」



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