テキストサイズ

君のため。

第90章 ~最初で最後の夜~

初めて彼の部屋に行く。

初めて彼の部屋に入る。

そして明け方まで過ごす。

でも、あまり覚えてないのだ。

お酒を飲みすぎたのかもしれない。でもそれだけでない。

おそらく彼女さんを愛する彼の一途な姿を受け入れるのが辛かったからこそ、
この夜のこと全部を私は記憶に残せなかったのかもしれない。


2回した。


でもあまり覚えていない。


ただ彼が、

「現実逃避なんかな」

と横で私が寝ている時に呟き、


ただ私が、

…私のこと可哀想だから抱いてるんでしょう?
大嫌いって言ってよ。

と最後に抱かれながら泣きながら言ってたことは覚えている。


ひどく悲しく切ない時間。



…あなたにとって抱き合うってどういうこと?


「愛を確かめあうこと」


付き合っていた時と一言一句、違っていない答え。


でも愛を感じないよ?

何してるの?私達。



…こんな、
彼の部屋での最初で最後の夜。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ