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変人を好きになりました

第22章 犯人探し

 柊一は言葉にならない声を発してから眉根を人差し指で掻いた。

「何してたの?」
「まあ、それは今はどうでもいいことだ。それよりも誰が古都さんの写真を撮ったか」
「どうでもよくないんだけどな。俺にとっては」
 俺の声が聞こえたはずなのに柊一は答える気はないみたいだ。

「古都の気持ちをよく知っている人物で、古都と柊一を引き離すことで何らかの利益を得る人物って……存在するの? 古都を好きな人か嫌いな人かのどっちかだよね」
「存在するはずだ。存在するはずなんだ」
「でもさ、古都って小さい時から色んな所を転々としててそこまで深く関わってる知人はいないと思うんだけど」

 俺の言葉を聞いているのか聞いていないのか柊一は顎に添えていた指もぴたりと止めた。
 急に故障したみたいに動きを止めた柊一を眺める。
 こういう時は喋りかけて柊一の集中を邪魔してはいけないと体が覚えているように、俺もじっとしていた。

「空良」
「はい」
 鋭く名前を呼ばれてつい畏まって返事をしてしまった。なんか情けねえな。
「そこにある辞書で愛をひいてくれないか」

 自分で何度も見ただろう辞書を渋々ひく。こんな単語を辞書でひく日が来るなんて思ってもいなかった。
「勝ちあるものを大切にしたいと思う、人間本来の暖かい心。人、特に異性を慕う心」
「特に。異性……か。出かけるぞ」
 なんだその宣言は。ついてこいってことか。
「いつから俺は柊一の助手になったんだよ」
 呟きながらもさっきまでの停止していた時間を取り戻すように機敏に動く柊一に続くように支度をして外へ出た。

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