
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第19章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 再会
祖父の涙ながらの懇願に、キョンシルは返す言葉もない。どう言えば、祖父の心を波立てないような答え方ができるだろうか。めまぐるしく思考を巡らせた末、言葉を慎重に選びながら紡いでいった。
「お祖父さま、私には慕う方がいるのです」
イルチェの眼が一、二度、またたいた。何かをしきりに思い出そうとするかのような眼でしばらく天井を睨み据えていたかと思うと、視線をキョンシルに向ける。
「それは、もしやあの若者か? そなたと一緒に暮らしているとかいう男、確かトスといったか」
どうやらイルチェはトスを憶えているようであった。流石に篤い病の床にあっても、かつての頭脳明晰さは衰えてはいないらしい。
「お祖父さま、私には慕う方がいるのです」
イルチェの眼が一、二度、またたいた。何かをしきりに思い出そうとするかのような眼でしばらく天井を睨み据えていたかと思うと、視線をキョンシルに向ける。
「それは、もしやあの若者か? そなたと一緒に暮らしているとかいう男、確かトスといったか」
どうやらイルチェはトスを憶えているようであった。流石に篤い病の床にあっても、かつての頭脳明晰さは衰えてはいないらしい。
