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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第8章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 海の町から

 二人に与えられた室は、本堂からは、かなり離れていた。境内の最奥部といっても良い場所に建っている。この寺には慈心和尚の他、老いも若きも取り混ぜて数人の修行僧が暮らしているようであったが、彼等の住まう棟とはかなり離れている。やはり、慈心和尚の配慮なのだろう。
 室といっても、独立した一戸建てになっている。むろん、部屋はひとつしかなく、手狭な感は否めないが、元々、キョンシルは下町のふた間しかない借家で生まれ育ったのだ。しかも、都を遠く離れて、見知らぬ異郷でのわび住まいであれば、これだけの待遇を与えて貰えるのはありがたい。

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