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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第20章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 花びら占い

 その日の主役である花婿花嫁は一旦親戚一同が会した広間に顔を見せてから、すぐに無礼講の宴の方に移った。
 既にキョンシルもトスも儀礼的な婚礼衣装から別のものに着替えている。
 キョンシルが纏うのは、虹色の絹で仕立てたチマチョゴリだ。衣装の裾や至るところに真珠が縫い付けてあるので、キョンシルが動く度に虹が煌めいているようでもあり、さながらキョンシル自身が虹を纏っているようにも見える。
 既に人妻となり、長い黒髪も後頭部で束ねていたが、髷に挿しているのは崔氏本家の若夫人にとしては地味な簪だ。銀の透かし彫りで桜を象ったそれは、一年前、トスがミヨンに贈るはずであった簪である。

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