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血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

 何よりも気に入らないのは、あのへらへらした顔だ。

 恨みや怒り、憤りなんてものも何もない、平和ボケした表情。

 見ていてイライラする。

 アイツの持っているのは東条のカギだ。


 ――もう、俺には関係ない。


 紫鳳のメンツなんてのも、鴇津にはどうでもよかった。

 ただ、見る目のなかった自分に、鴇津は肩を落とした。





   ◆ ◆





 校舎に戻ると、人気はほとんどなくなっていた。

 部活なんて爽やかな活動もない霧金は、校舎に生徒がいなくなる時間がすごく早い。

 そんな校舎にいた数人の団体が、廊下の向こうからやってきた。

 その一番後ろに、中林の姿が見えた。

 しかし、中林たちの前を歩く男たちに見覚えはない。

 誰だろうと思いながら、リツは立ち止まる。

 それを見て、彼らもリツと対峙するように止まった。

 そして団体の真ん中に立つ男が口を開いた。


「紫鳳のカギ、俺が頂くぜ」


 耳にタコのはずのその台詞に、リツは反応した。


「どういうこと?」


 このカギを狙う輩が、そこら中にいることは身を持って知っている。

 しかしそこに中林のいる理由がわからなかった。

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