
血とキズナ
第7章 ニセモノ
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学校もバイトも休みの土曜日。
今日は、心置きなく暇を堪能する日だ。
今までは休日でも何かにつけて、護衛だ何だと佐山やユウゴたちと一緒にいて、一人になることはほとんどなかった。
しかし最近はカギ狙いの連中も大人しくなり、そこまで気にする必要もなくなった。
久しぶりの気儘な休日である。
リツは朝食とも昼食とも言えない食事をとり、佐山が部屋に散乱させた雑誌を眺めていた。
その佐山は、リツが起きる頃に同級生たちとどこかへ出かけていった。
リツも誘われたのだが何せ起き抜けで、すぐに出かける気分ではなく、断った。
窓を開けて、そよ風と日の光を浴びながらごろごろするぐらいが、たまの休みには丁度いい。
寝転がりながら雑誌を読むのも疲れてきて、リツは雑誌を胸に置きながら目をつぶった。
春の陽気に包まれ、リツの細く柔らかい黒髪がそよぐ。
「平和だ――」
そんな言葉が自然にこぼれるほど、リツの心はまどろんでいた。
そんな瞬間に、枕元の携帯が鳴り響く。
ゆったりした時間が、急に動き出した。
不意打ちに、リツはびくっと体を震わせる。
「ったく、誰だよ」
リツは独特の振動が嫌いで、バイブレーション機能をオフにしてある。
音だけで着信を知らせる携帯を開くと、その相手は意外な人物で、リツは飛び起きながら通話ボタンを押した。
