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血とキズナ

第1章 約束のカギ

 窓が割れ、春の温い風が吹き抜けるが、下はゴミが散乱した廊下。

 そんな廊下を歩いていると、前から知った顔が3人やってきた。


「よぉ、リツ」

 3人の真ん中に立つ男が、手を挙げた。


「中林くん」

 リーゼントにセットされた茶髪に、高校生とは思えない厳つい顔。

 彼は明日斗とよく一緒にいた、一つ年上の知り合いだった。

 後ろの2人も、中林とよく連んでいる一つ上。

 だからリツとも、それなりに仲はよかった。


「久しぶり、元気にしてた?」

「おう、オメーこそ、まさか霧金に来るとは思わなかったぜ」


 ドスの利いた声が、少し懐かしい。

 中林と話したのは、明日斗が死んでから初めてだった。


「ちょっとあってね。
 中林くんこそ、ここで何してんの?」


 1年の教室は4階。
 2年は3階。

 用がなければ、上級生がわざわざ4階に来ることはない。


「ああ、お前に用があったんだよ」

「俺に?」


 リツは首を傾げる。
 少し意外だった。

 中林とはそれなりの仲だが、明日斗を抜きにして、中林が直接リツに会いに来たことは、今まで一度もなかった。

 リツのほうからも、わざわざ会いに行ったことはない。

 知らない仲ではないが、中林とは明日斗を介しての仲でしかなかったはずだ。

 それがわざわざ4階にまで来るなんて、リツは少し訝しんだ。

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